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「販売数量は21万トン。これは流通が滞って、スタック(停滞)している状況を何としても改善したいという強い決意の数字だと受け止めてほしい」

 

 2月14日江藤拓農水相は政府の備蓄米の放出を発表した。消費者が買う米の値段は、これで下がるのか。専門家へ緊急取材を行った――。

さらに値上がりしているコシヒカ

 令和の米騒動は、春を待たずに第2幕が開いた格好だ。米穀卸小売業を営む「米マイスター麹町」の福士修三社長が嘆く。

「2月初旬の時点で、新潟県魚沼産のコシヒカリが、卸では60kg(1俵)5万円で取引されています。去年の12月は3万円前後だったのに、年が明けたら、さらに値上がりしています」

 今回放出が決定した21万トンの備蓄米は、3月初旬にまず15万トンがJA(農協)など大手の集荷業者に売り渡される。3月下旬にはスーパーなどの店頭に並ぶ予定だという。備蓄米という言葉には、数年前に収穫された古い米というイメージがあるが、農水省農産局の担当者に聞くと、

「15万トンのうち、10万トンが2024年の秋に収穫した米で、5万トンが23年産の米になります」

 では、備蓄米の流通によって、米の値段はどれくらい下がるのだろうか。農学博士で愛知大学名誉教授の高橋五郎氏が推測する。

「下がったとしても最大で500円…」

「下がったとしても最大で500円がいいところじゃないでしょうか。コシヒカリ5kg4400円なら3900円、他の銘柄で4000円なら3500円くらいだと思います。備蓄米は政府が契約している倉庫に保管されていますが、維持費も年間478億円かかっている。倉庫から備蓄米を出すにも、輸送コストなどがかかるでしょう。現状で5kg3000円台前半に戻ることはないと見ています」

 農業ジャーナリストの石堂徹生氏もこう語る。

「肥料や農機具の費用など生産コストが上がっていて、農家は米を作るだけで赤字です。昨年、JAが概算金(米の集荷時に農家に支払う前払い金)の値段を2〜4割値上げしています。つまり、農家やJAが損をしないよう、価格はどんなに下がっても2割くらいに落ち着く。5kg4000円の米なら3200円程度と見ています」

 一方で、外国産米の意外な影響を指摘するのは福士社長だ。

「国産米は5kgで3000円を切ることはないでしょう。今、米国産など外国産米が1kg500〜600円に値上がりしています。5kgなら2500〜3000円の計算です。農水省は国産米を外国産米より安くするのは避けたいはずです」

 総務省の小売物価統計によれば、新潟市の場合、22年はコシヒカリ5kg2129円だったが、24年は2700円まで高騰している。札幌市に至ってはコシヒカリ5kgあたりの値段が22年の2443円から24年には3329円まで値上がりしていた。

 いずれの専門家に聞いても、米の価格は、1割から2割ほどしか下がらないと予想しており、庶民にとって一安心とは程遠いことになりそうだ。

 そもそも、昨年の夏に米が不足した時は、「新米が流通すれば、価格は下がる」という話だった。なぜ、米の価格は下がらなかったのか。農水省の見解を聞いた。

「通常であれば、新米は秋に食べる分が売買取引され、残りの米は生産地の倉庫に残っているはずでした。ところが、外食産業をはじめ、多くの業者が、(在庫の枯渇を心配して)1年分の米を昨年秋の時点で確保する動きが起きた。

 その結果、JAなど大手の集荷業者へ米が集まらなかったのです。さらに、大手以外の業者が、生産地まで入って米を買い回り、米の円滑な流通を阻害したため、値段が下がらなかったと分析しています」

「消えた21万トン」の米

 実際、集荷業者が米農家から買い集めた米は前年より21万トン少なかった。これが「消えた21万トン」の米と呼ばれている。

 米を買い占め、値段を釣り上げている“犯人”として、農水省が問題視しているのが、新規参入事業者や転売目的の投機筋だ。福士社長が語る。

「投機目的の人たちの影響が多少はあると思います。ただ、転売目的の一般の人がいくら買ったといっても、100kg程度。トラックで買い付けに来ても1トンくらいなのではないか。米の生産量から比べると微々たるものです」

 では、大規模業者が、買い占めているのか。

「業者は、大手の外食チェーンなどに卸すために、1年分を確保しないといけないから持っているだけ。売り渋りも一部でしかないでしょう。米は空調設備の整った倉庫で保管する必要がありコストもかかります。そもそも備蓄米が放出されたら値崩れするリスクもあるので、手を出しにくいでしょう」(同前)

 原因は単純ではなく、近年の流通制度の変化が、背景にあるのでは、と福士社長は考えている。

「生産者から消費者への直販が増えています。お米の袋を扱う会社に聞くと、今年は米の生産地からの注文がすごく多いそうです。米農家はJAに米を卸していれば、米袋は用意してもらえるので買う必要はありません。ただ、直販の場合は生産者が米の袋に入れてお客様へ郵送する手続きをとります。以前は収穫した米をほぼ全てJAへ卸していたのですが、それが変わってきている」

 また、福士社長は、米の収穫量が増えたという感覚がないともいう。

米の収穫量は正しかったのか

「生産者に聞くと、去年の11月頃から『思ったより収穫が少なくて米が足りない』と嘆いていました。去年の収穫時期は新潟県石川県で豪雨の被害があって、山形県福島県でも天候の影響で稲が倒れて被害が出ています。農水省の計算より実際の米が少ないかもしれません」

 農水省は昨年12月に24年産米の収穫量が前年比2.7%増の679万2000トンと発表。同省は取材に「我々が頼りにしている数値の中では、最も精緻」と自信を見せる。しかし、政府が把握している米の収穫量が、そもそも正確ではなかったのでは、と指摘するのは高橋氏だ。

「収穫量は、全国の田んぼをサンプル調査して、1枚(1筆)あたりの収穫量から推計している。そのため、現状との乖離が出てしまう。数字が本当に正しかったのか。収穫量が少なく、品薄であれば値段が下がらないのは当然です」

 元農水省事務次官で、新潟食料農業大学名誉学長の渡辺好明氏も同様の見解を持っている。

「かつて米の統計調査員は何万人もいましたが、経費や人員の削減で少なくなってしまったのです。現在の農水省は非常に小さなサンプルで全体を推測している。米の生産量や流通量について、正確に把握できていない可能性があります」

 農水省によると現在の調査員は、全国で549人だという。渡辺氏は、現在の米の生産調整(減反政策)も、価格の不安定化に拍車をかけていると話す。

「国が米の生産量の基本計画を作ること自体が、もう時代遅れです。国内だけの需要と供給のなかでギリギリの数字を決めているから、足りないという年も出て来る。海外の農家のように個々の農家の判断で、生産量を決める時代が来ているのでしょう」

 国が把握する数字と現状との乖離が続けば、毎年のように「米騒動」は起こり得る。福士社長は、すでに今夏の米不足をこう心配する。

日本米穀商連合会が、今年1月に米穀の専門店にアンケートを取ったところ、6割が在庫は4月分から6月分までと回答しました。昨年よりも早く在庫切れを起こす可能性があり、心配しているところです」

 米に悩まされる日々は続くのかもしれない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年2月27日号)

江藤農水相

(出典 news.nicovideo.jp)


(出典 Pixabay:allybally4b)


今年の夏、日本が直面する米不足の懸念について、農水省が注目しているとのことです。さまざまな要因が複合的に影響している中で、市場価格の変動が農家や消費者にどのような影響を及ぼすのか、専門家の見解が非常に興味深いです。今後の政府の対策や消費者の行動がどう変化するのかも注目していきたいと思います。

<このニュースへのネットの反応>

ホタテ養殖みたいな国内流通しない一次産業に補助金ジャブジャブ入れて富豪を量産しといて、米は農業機械に若干の補助金をくれるだけ

JA関連団体から歴代農水大臣に流れた献金があれば補助金をもっと渡せるんじゃないんですかね。

犯人爆入れは仕方ないとして闇市のメルカリとかチョンアママケプレを片っ端から*ば?

今の制度と抜け穴を作っておいて、責任取らない奴は転売ヤーの仲間。

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